5月の修復的対話講座の感想をご紹介します。
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【コスモス村に帰れ】
山下先生のコスモス村で、修復的対話の講座を受けてから2週間が経とうとしている。感想を書きたいなと思いつつ、いつもは比較的すぐに言葉になるが、今回は不思議と言葉にするのに時間がかかってしまった。
今回の講座の後にはずっと、「ふわっとあたたかいベールに包まれ、守られている」ような感覚がある。以前受講したソーシャルワーク講座では、「心に灯った、小さいが、あたたかいろうそくの灯」のような、心を燃やすエネルギーをもらった感覚になったので、その違いがおもしろい。
ところで、スクールソーシャルワーカーをしていると、やわらかい心と、かたく守られた心の、両方が大切になる。子どもや保護者と関わるときには、やわらかい心が重要だと思っている。共感しながら、一人ひとりの視点に近づいて、学校や世界を見てみたり、気持ちを想像してみたりすることができるからだ。
その一方、職場は教育現場なので、ソーシャルワーカーはマイノリティの立場になる。楽しくやりがいがあることも多いが、もちろん不条理なことも、辛いことも、傷つくこともたくさんある。表面上はニコニコ過ごしていても、実際は強くあらねばならないので、防衛していることが多い。本当は繊細な人も、あえて鈍感になり、かたく守られた心をつくっていかないと、すぐに病んでしまうだろう。そして今回は5月であったので、新年度の体制の変化などで、私はかたく守られた心ばかりが優位になっていた。
そのような状況の中、今回の修復的対話の講座を受けた。
自分はかなり人見知りをするし、安心安全だと思える人や環境が少ない方なのだが、このメンバーを心から信頼でき、不安や恐れを一度も感じなかったことには驚いた。安心安全を保障され、自分の存在と言葉を尊重され、自分のことも大切にできた。しずかに仲間の話を聴き、しずかに自分の心とも対話し、ぼんやりした感情も丁寧に言葉にしてみることで、やわらかい心の方をたくさん復活させることができた。
そして、受講後には「世界がちょっと違って見えた」。
実際、他の受講メンバーからも、そのような共通の声があった。
そのため、職場に戻った時には、新しい気づきも生まれたし、子どもから相談されたときには、対話を大切にし、しずかに子どもと自分の気持ちを見つめることができ、新しい行動にもつながった。
ただその反面、逆に辛くなったこともある。辛いのが当たり前の日常に慣れるため、その辛さを感じなくしていたが、突然やわらかい心の方が優位になってしまったので、そうでない環境では改めて新鮮に心の痛みを強く感じることになった。
(一般では、「クールヘッドとウォームハート!」が理想だと言われるかもしれないが、不器用な私には両立が難しい時もある。)
特に学校は、運動会前であったので、様々なことが起こったし、子どもたちも疲れ切っていた。子どもが大人に辛い、休みたいという気持ちを伝えても、「あと少し頑張ってみよう」と、個よりも集団の行事が優先され、対話が成立することは難しかった。子どもの声が消され、子どもの無力感も大きくなっていた。そして私も、学校における抑圧と傷つきををもろに感じてしまい、とても苦しく葛藤した。
ただ、それは副作用として悪いものにもなったかというと、そうではないだろう。かたく守られた心だと感じることのできない、繊細な子どもの気持ちも、改めて感じて味わうことができたからだ。そうでなければ、集団を重んじる学校環境を、個としての子どもの側に寄せていくことはできない。今の当たり前を、子どもに押し付けたままにしたくないから。
今後は、やわらかい心を忘れず、しずかに自分の心をみつめ、学校の中に子どもの声や対話を取り入れ、生かし続けられたらと思っている。心が傷つくこともあるかもしれないけれど、それも味わおう。「ふわっとあたたかいベールに包まれ、守られている」感覚があるから大丈夫だ。一人ではないのだから。
もしも再び迷ったら、「コスモス村に帰れ」ばいい。